オホーツク海沿岸の本格的な秋は、九月上旬さんご草の色づきから始まる。
さんご草(正確には「あっけし草」はせいぜい10?までの細長い、あかざ科の一年草である。春から夏にかけては、水際の牧場にまぎれて目立たないが、秋風もやや涼しさを増す頃になると、次第に赤みを帯びて来て、九月中旬、露霜にあうと急激に鮮やかに燃え盛り、湖畔のそこここに、あたかも真紅のじゅうたんを敷きつめたようになるのだ。能取湖の常呂寄り、佐呂間湖のキマネップが有名で、常呂町トウフツにも少し見ることが出来る。








オホーツク名物海霧(ジリ)は夏から初夏にかけて現れる。
地上のあたたかい空気が、寒流に冷却されてたちまちに白いベールにつつまれる。
海霧が立ちこめると、能取燈台の霧笛も悲しくひびいて来る。
耳を立ててそれを聞く馬の姿もあわれである。


2004.10.03 UP




秋もたけなわになると、馬鈴薯はトラックの上を躍りながら澱粉工場へ、とうきびはポロポロこぼれながら缶詰工場や冷凍工場に運ばれる。ビートは要所要所に集荷され、時ならぬ小山が出現する。
浜は何といっても鮭(あきあじ)漁だ。最盛期には一起こし(一網一回)数千尾何百万円というのだからけたが違う。荷揚場の鼻息が荒く、加工に大多忙を極める。ご存知の新巻(あらまき)はオホーツク沿岸のものが最も美味である。
農家・漁家はもとより、勤人の主婦たちも、町を上げて色々な加工場に働き、最も活気を呈する時である。




ちょっと遠いが、常呂川支流ホロナイ川の紅葉が美しく、町の東端大島の開拓部落から見る能取湖の月の出は、最も雅趣のある風景だ。




十月初旬、初霜とともに山々はあっという間に紅葉し、
十一月、初雪も待たぬ中に一斉に散ってゆく。
オホーツクといえば、暗いイメージを持つ人が多い。
しかし、この沿岸は日本中で一番降水量(雪も含む)が少なく、日照時間が永い。
底抜けに明るい地方であることを知ってもらいたい。

2004.10.03 UP



「句集 流氷の町」より