常呂の夏は、いつからいつまでをいうのだろう。










6月下旬、ワッカの龍宮(大町桂月が命名)の原生花園に、せんだいはぎ、えぞきすげ、えぞすかしゆり、はまなす・・・・・・が一斉に咲き揃った時、自然はここに夏を宣言したと見てよいのではないか。






















北海道に梅雨はないといわれる。たしかに五、六月は雨が少ない。七、八月には本州に負けない暑さの日もある。それでも空気が乾いているからしのぎよい。何年かに一度、真夏に雨の続く冷夏がある。八月でもストーブを焚く。この時は流石にうっとうしい。冷夏は凶作にもつながるから余計気が滅入るのだ。



2004.10.03 UP


夏に入ると、午前三時には空が白む。森繁が「知床旅情」の一節に”はるかくなしりに白夜は明ける”と歌ったのも、あながち間違いではない。
待ちかねたように、オホーツクには無数の船が出て、いろいろの漁が始まる。

帆立貝は七月1日解禁、「八尺」と称する鉄の爪で海底を曳き、貝を掘り起こし網に集める。
その豊かな貝柱はいろいろな調理法で賞味されているが、私は、人影稀なオホーツクの浜辺で、骨片のごとき流木を焚きながら、貝殻ごと焼いて食う浜焼きを最高の味としたい。

蒼い親潮に突き出て、転々と赤い浮玉(アバ)が並んだ鱒の定置網もなかなか風情がある。


山も畑も夏は忙しい。
落葉松の風防林で劃された平野に、オホーツクやサロマ湖・ノトロ湖を見下ろす斜面に、トラクターは赤い甲虫のように走り、白い「かぶり」をかぶった農婦たちは、終日草取りなどに余年がない。市街地のサラリーマンの主婦たちも殆どが魚の加工場か農家に出面取りに行く。
常呂の町民はみな勤勉である。


真夏のサロマ湖での遊びは、常呂の人々に恵まれた最高の場である。
そして立秋は暦の上だけでなく、朔北の地には、朝夕まぎれもなく秋の訪れを感じさせるのだ。


「句集 流氷の町」より